明日はもう9月になりますが、暑い日がまだまだ続きますね。商売にとっては季節がはっきりしたほうがありがたい、といいますので、せめて朝晩は涼しい風が吹くようになってほしいものです。
 私が時々行く飲食店の話です。あまり大きくなく、予約しないと入れないことが多い人気店ですが、行くたびに満足度がまったく違うのです。基本メニューは全く同じ。食べるもの、飲むものもそんなに変わりません。それなのに「あぁ、おいしかったなあ」と思うときもあれば、「今ひとつだったなぁ」と思うときもあります。その差はどこから来るのか。それは「接客レベルの差」です。
 オーナー兼店長はすべての客に目を配り、メニューの説明も丁寧で、何より明るい。ところが彼が不在の時は、店の雰囲気すら変わってしまいます。ほかの店員にそこまでのホスピタリティが備わっていないのです。店員さんはまじめに働いていますが、何となく愛想がなく、話しかけても最低限の返事しかしません。不思議なもので、そうなると「いつもはもっとおいしいのに」という心理が働き始めます。やがて「店長がいない日は行く価値がない」と思うようになります。
 店長がいなくてもおいしい料理と酒を提供できるような仕組みは作っているのでしょうが、肝心なことが抜け落ちてしまっては、お店の魅力は半減してしまいます。飲食店だけではありません。例えば飛行機。同じ料金を払うのなら素晴らしいサービスを提供するキャビンアテンダントに巡りあいたいと思うのは当然です。タクシーでも愛想のない運転手よりは、あいさつが気持ちの良い運転手さんに会えると満足度も違います。
 人を育てるのは本当に難しいと思います。ただ、その努力を続けるか、怠るかでお店の優劣、すなわちマーケティング力が決まるはずです。                   (日経MJ 飯田 展久氏)