「価格競争のジレンマ」 (日経MJ 滝山晋 氏) (2009/11/21)
通勤の道すがら、弁当を売っている店をよくみかける。
今年に入ってからの話だが、ある店が300円を下回る弁当を売
りだすと、あっという間にその周辺の店が追随した。いまは300
円を切った上で、「ご飯大盛り」や「ゆで卵サービス」を競ってい
る。
そのうち200円を切る弁当が登場するかもしれない。消費のあ
らゆる分野で起きている価格競争の熾烈さには驚くばかりである。
いま日本経済がかかえる危うさをひとつ問われたら、真っ先に
「デフレ」を挙げたい。
7-9月期の国内総生産(GDP、速報値)は実質で前期比年率
4.8%増と景気回復を示したが、そんな実感は全くない。物価下
落の影響を加味した名目成長率は6期続けてマイナスのままだから
だ。
名目GDPの実額は17年半ぶりの低さに落ち込んだ。景気の皮
膚感覚はまさにそんなところだろう。
物価が下がり続ける「デフレ」は始末に負えない。モノやサービ
スの価格が下がる中で生産や販売を量的に増やしても、売上高は増
えない。企業収益は悪化し、雇用や賃金の減少につながる。
点火しない個人消費を少しでも喚起しようと、企業はまた価格を
下げる。いま起きているのは、まさにこの悪循環ではないか。
企業もデフレの恐ろしさは分かっていると思う。分かってるが、
値下げはやめられないのだろう。企業も個人も身動きが取れなくな
る点も、デフレの厄介なところだ。
だが、価格競争は遅かれ早かれ限界点にぶつかる。11月6日付
の日経MJでは回転ずし大手が価格戦略を見直したことを伝えた。
こうした動きが広がっていくのかどうか、注目したい。